きりんさんパパのあくび

共働きで二児の子育てに追われるパパの雑記。育児ネタ、簡単料理、家庭菜園、DIY、商品紹介など色々と書いています。作業療法士というリハビリの仕事をしています。

エジソンのお箸は本当にいいの?メリットやデメリットは?手のリハビリの専門家である作業療法士が分かりやすく説明します

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お子さんのお箸の悩みは親なら誰もが通る道?

私は病院で作業療法士として働いています。

あまり聞きなれない名前の職業かもしれませんが、作業療法士とは事故や病気などによって身体機能に何らかの障害を負ってしまった際に、主に手や指の機能改善を図る手と指のリハビリ専門職です。

十年以上病院で働いていて、発達障害や脳性麻痺などによって手の不自由なお子さんのリハビリを行う機会も多いのですが、患者さんのお母さんから頂く質問でとても多いのがお箸についての質問なんですよね。

 

「普通、何歳くらいからお箸が使えるようになるんですか?」

「〇〇が出来るようにならないとお箸を使うのは難しいですか?」

 

お箸についての悩みは人それぞれですが、食事という動作は上手に出来ないと本人が不自由であるという事だけで無く他人から見られる機会も多い動作なので、お子さんがお箸を上手に使えるようにと願うのはお母さんにとっては当然の事ですよね。

 

「エジソンのお箸って使っても大丈夫ですか?」

「おすすめの矯正箸ってありますか?」

 

特に人気の高いエジソンのお箸についてはよく質問を頂きます。私の子供が通う保育園のお母さん方の間でもエジソンのお箸について賛否があるようで、障害の有無に関わらず箸操作の習得というのはお母さんの関心も高いようです。

 

インターネットで検索してみると、エジソンのお箸についてメリットやデメリットについて書いている記事が散見されますが、「簡単にお箸を使えるようになるから良い」「変なクセがついてなかなか普通の箸が使えるようにならないから悪い」といった漠然とした口コミは多いものの、「なぜ良いのか」「なぜ悪いのか」といった根拠に薄く、作業療法士として病院で手のリハビリをしている立場の人間からすると物足りないものがほとんどです。

エジソンのお箸のメリット、デメリットを知りたいと考えるお母さん方が本当に知りたい情報は、「いいらしい」「悪いらしい」といった風の噂レベルの話では無く、「なぜ良いのか」「なぜ悪いのか」といった根拠に基づいた情報ですよね。

そこで、エジソンのお箸に代表される矯正箸がお子さんの手に合っているのかどうかをお母さんが判断しやすいように、メリットやデメリットも含めてなるべく分かりやすく説明したいと思います。

 

出来ない原因は人それぞれ。病院では対象の患者さんに合わせてリハビリの訓練プログラムを考えていきます

 

同じ「お箸を使えるようにする」という目標の患者さんであっても、出来ない原因や症状によってリハビリの訓練プログラムは違います。お子さんがお箸を上手に使えない原因も症状も十人十色なんですよね。

普段あまり意識する事は無いかも知れませんが、実は「出来るようにする」というのには、大きく分けて以下の2つのパターンが存在します。

 

①病気や怪我によって出来なくなってしまった動作をもう一度出来るようにする

②今まで一度も出来ていない動作を出来るようにする

 

①は、転んで手を骨折してしまった、階段から落ちて脊髄を損傷してしまった、脳梗塞によって半身マヒになってしまった等、何らかの原因によって出来きなくなってしまった動作をもう一度出来るようにする場合です。よくテレビドラマなどで見かけるリハビリのシーンではこちらのパターンが多いので、一般的なリハビリのイメージはこちらではないかと思います。

②は、お子さんが中心で、脳性麻痺、脳炎、発達障害などによって一度も出来た事の無い動作を出来るようにする場合です。お箸だけでなく、字を書く、歯磨き、お着換え、トイレ動作など身の回りの事を中心に、病院ではお母さんと相談しながらリハビリの訓練プログラムを進めていきます。

 

①②どちらのパターンであっても、訓練の方針としては大きく分けて下記の3つのPlanの中から判断して動作の獲得を目指します。


Plan A 障害を負ってしまった手の機能を改善して出来るようにする
Plan B 動作の方法を変えて出来るようにする
Plan C 補助具を用いて出来るようにする

 

どのPlanを採用するかは作業療法士の腕の見せ所ではあるのですが、一番の目安になるのがその患者さんの予後予測です。つまり、どこまで機能が良くなるかという事です。ここは医師ともよく相談しながら考えていきます。

 

例えば、

 

リハビリをして体の機能を改善すれば動作が出来るようになると予測→Plan A

リハビリをして動作の方法を改善すれば動作が出来るようになると予測→Plan B

自助具や装具などを用いれば動作が出来るようになると予測→Plan C

 

ざっくりではありますが、概ねこんな感じでPlanを決定していきます。

 

ちなみにPlan AとPlan Bの両方の場合もありますし、Plan A~Plan Cのどれにも当てはまらない場合、つまり残念ながら動作の再獲得は難しいと判断する場合もあります。障害を負った方の手では動作の獲得が難しいと判断した場合、今度は反対の手で動作が獲得出来ないか考える場合もあります(利き手交換といいます)。

 

方針が決まったらあとは訓練あるのみです。リハビリで最も重要な事は動作の反復練習です。繰り返し練習する事によって動作が身に付きます。

この際、正しいフォームで練習する事が大切なのですが、怪我や病気によって出来ない動作や出来なくなってしまった動作の獲得を目指す患者さんの場合、そもそも正しいフォームが分からなかったり、繰り返し練習しているうちに自己流になりやすかったりして正しい動作の定着が難しかったりする事が多いんです(理由はたくさんありますがここでは割愛します)。だから病院で専門家に見てもらいながらリハビリを行う必要があるのです。

さらに、お子さんの場合は上記の理由に加えて発達段階を考慮する必要があります。つまり、お子さんの手の機能が正しく動作を行える状態まで発達しているのかどうか。お箸の練習であれば、お箸を使う為の機能がお子さんの手に備わっているかどうかを考えないといけないのです。なかなか素人が判断するのは難しいですよね。

 

少し長くなったので情報を整理します。

 

「動作が出来ない」

→「原因から予後を予測」

→「正しいフォームで反復練習」

 

これが基本的なリハビリの流れでした。

 

なぜこれまで長々とリハビリの流れを説明したのかというと、一般の保育園や幼稚園に通う普通のお子さんがお箸の練習を行う際にも、全くこの流れに従って訓練を行えば必ず上手にお箸を使えるようになるからです。

 

しかも、一般の保育園や幼稚園に通うお子さんの場合、「原因から予後を予測」の部分を考える必要がありません。なぜなら、動作が出来ない原因のほとんどがお子さんの手の機能が正しく動作を行える状態まで発達していないだけだからです。

 

「お箸が使えない」

→「お子さんの手の機能がお箸を使える状態まで発達しているかどうか」

→Yes「正しいお箸の持ち方で反復練習」

→ No「お箸の練習を始めるには早い」 

 

怪我や病気によって動作が出来ない患者さんの場合、「原因から予後を予測」の部分が非常に複雑で予想が難しく、また、その症状に合わせた「正しいフォームでの反復練習」を行うには高い専門性を必要とします。

しかし、一般のご家庭では「お子さんの手の機能がお箸を使える状態まで発達しているかどうか」の部分だけ考えれば良いのです。

 

あくまで目安ではありますが、

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「鉄砲のポーズ」

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「3本指で鉛筆を握る」

 

この2つの動作が完璧ではなくとも出来るようになってくると、お箸の練習をスタートする一つの目安になります。

 
子供の成長の早い遅いを周りの子供と比べて心配するのは当然の親心なのですが、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。

手や指の使用状況によって多少の早い遅いはあるにしても必ずお子さんの手の機能はお箸を使える状態まで発達していきます。さらに、無理にお箸の練習をしなくとも(子供がストレスを感じるほどお箸の練習をしなくとも)必ずお箸は使えるようになります。

また、正しいお箸の持ち方に関しては身近にお父さんお母さんという良い見本がいますので何ら心配する事はありません。よね(^^♪

 

 少しは気が楽になりましたか?

それとも気が重くなりましたか(笑)?

 

次はお箸を使う為に必要な手の機能についてお話します。 

 

お箸を使う為に必要な手の機能とは

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手にはとてもたくさんの筋肉が存在するのですが、大きく分けて写真の赤い丸で囲んだ赤色グループの筋肉と、青色の丸で囲んだ青色グループの筋肉に分ける事が出来ます。そして、このグループにはそれぞれ特徴があるのです。

 

赤色グループの筋肉の特徴:力は弱いけど細かい動きが得意

青色グループの筋肉の特徴:力は強いけど細かい動きが苦手

 

赤色グループの筋肉は細かい動作が得意で、お箸を使う、鉛筆で字を書く、お財布から小銭を取り出す、水の入った紙コップを掴むなど、微妙な力加減が必要な動作の際に活躍する筋肉です。

青色グループの筋肉は力の必要な動作が得意で、雑巾をしぼる、重たいコンビニの袋を持つ、フライパンで調理する、など力強く握る際に活躍する筋肉です。

お箸を使う時にはどちらのグループの筋肉も一緒に働くのですが、箸操作は微妙な力の調整が必要な動作なので赤色グループの筋肉が特に一生懸命働いています。青色グループの筋肉も指を曲げる際に必要な筋肉で、とても大切な働きを担っています。赤色グループの筋肉と青色グループの筋肉がバランスよく働いて初めて上手にお箸を使う事が出来るようになります。この「バランスよく働いて」というのがポイントで、どちらのグループの筋肉が頑張り過ぎても頑張らな過ぎてもダメなのです。

 

子供の手の発達について考えてみると、手の筋肉は力が強くなるとともに少しずつ赤色グループの筋肉と青色グループの筋肉がバランスよく使える事を学習していきます。

赤ん坊の手を見ていると、初めはグーとパーしか出来ませんよね。それから少しずつチョキが出来るようになったり、親指と人差し指でOKサインが出来るようになったりしながら、大きな物からだんだんと小さな物が持てるようになっていきます。

小さな物が持てるという事はつまり物がつまめるという事です。具体的には親指と人差し指(2本指)、もしくは親指と人差し指と中指(3本指)で物をつまんで、薬指と小指は邪魔をしないように手のひらにあたりに待機しているはずです。

お箸を持つ場合にはこの指を一本ずつ曲げるという動作がとても大切で、この動作がスムーズに出来るようになって初めて子供はお箸を使う事が出来るようになるのです。

 

さぁ、お子さんの手をじ~っと観察してみましょう。

 

グーチョキパーは出来ますか?

OKサインは出来ますか?

親指から小指まで順番に曲げる事は出来ますか?

 

出来なくても心配する必要はありません。楽しみながらお子さんの手の成長を観察してみましょう。毎日子供に「グーチョキパーやってみて」とか言うのはダメですよ。そのうち嫌になってやってくれなくなってしまいます。子供の手の発達を知るポイントはお子さんの動作をよく観察する事です。

 

〇靴を履けるようになった

〇ファスナーを上げられるようになった

〇ボタンを留められるようになった

〇ヤクルトの蓋が開けられるようになった

 

出来なかった動作が出来るようになった際などは成長が実感しやすいですよね。 

 

〇ご飯の食べこぼしが少なくなった

〇お着換えが早く出来るようになった

〇ボールを投げるのが上手になった

 

動作が上手になったり早くなったりするもの成長の重要なサインですね。

 

お子さんがなかなかお箸が出来るようにならないと焦ってしまうお母さんも多いですが、出来ない事に焦るよりも出来る事が一つずつ増えていく事や動作が上手になってゆく事に目を向けながらお子さんの成長を楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

指の発達を促す訓練とは

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 これまで、「無理にお箸の練習をしなくても大丈夫ですよ」という事をお話してきましたが、「周りのお友達が次々とお箸を使えるようになってゆく中で自分の子供だけがお箸を使えないとやっぱり心配になってしまう!」というお母さんの為に、お子さんの指の発達を促す訓練方法を紹介します。

お子さんの手の発達状況によって適切な訓練は異なってくるのですが、子供が楽しめるものの方が熱中しやすくて訓練効果も高くなります。クリエイティブなものやゲーム性のあるものがおすすめです。

 

クリエイティブ系

積み木、パズル、塗り絵、折り紙、ねんど 等々...

ゲーム系

オセロ、カードゲーム、あやとり 等々...

 

お子さんの興味やお母さんのアイディアによって訓練の種類は無限大です。リハビリの現場ではお子さんが興味を持てれば何でも訓練として採用します。「適切なレベルの訓練がどれか分からない」と思うかも知れませんが、適切なレベルかどうかは実際にお子さんにやらせてみるとすぐに分かります。

 

簡単に出来ている→簡単過ぎる

ぎこちないけど一応出来ている→適切

全然出来ない→難し過ぎる

 

お母さんからみて、この位の大雑把な見立てで判断して大丈夫です。毎日お子さんをみているお母さんの眼力ならそんなに大きく外す事はありません。

 

間違ってもお皿の豆をお箸でつまんで...なんて訓練をしてはダメですよ。前にもお話しした通り、リハビリの基本は反復訓練です。訓練の回数を稼ぐ為にも、お子さんが興味を持てる、楽しい訓練を選んであげて下さいね。

もし、お子さんがお箸に興味を持ってきて、お母さんの目で見ても「何とかお箸使えそうだな」と判断したならば、実際のお箸を使って訓練してあげてもいいと思います。ただし、褒めてあげながら、お子さんが楽しめるように心がけて下さい。子供にとってお母さんに褒められる事は何よりも嬉しい事です。ご飯の時間が楽しくなり、自然と自分でお箸を使おうとする回数も増えていきます。当然、お箸が上手に使えるようになるのも早くなります。

逆に、実際のお箸で訓練を始めてみたけれど、お母さんがイライラするくらいお子さんがお箸を上手に 使えないのであれば、それはお箸にトライする時期が少し早いという事なので、もうしばらくスプーンとフォークでのご飯を続けてみましょう。

 

作業療法士として考えるエジソンのお箸のメリットとデメリット

エジソンのお箸を使うと早い段階で食事が出来るようになります。ここで強調したいのは、食事が出来るようになるのであって、普通のお箸が使えるようになる訳でないという事です。ですので、「エジソンのお箸を使うと早くお箸が使えるようになる」という口コミにあるような表現は少し語弊があります。

エジソンのお箸を使っても、普通のお箸が早く使えるようになる訳ではありません。なぜなら、エジソンのお箸を使う時に使う筋肉と普通のお箸を使う時に使う筋肉は違うからです(厳密には赤色グループの筋肉と青色グループの筋肉のバランスが違う)。

また、エジソンのお箸を使っているだけで正しいお箸の持ち方が身に付くというのも間違っています。エジソンのお箸を使っても根本的なお箸を使う手の機能を鍛える効果は無いとは言いませんが、かなり限定的です。

しかしながら、「すぐに使える」「早い段階で食事が出来る」というのは、大変なメリットでもあります。 

子育てをしていると、「お姉ちゃんみたいにお箸を使ってご飯が食べたい」と愚図ったり、気分が乗らずになかなか食事が進まず困る事も多いですよね。朝の忙しい時間の子供の愚図りは共働き家族にとっては死活問題といっても過言ではありません。

エジソンのお箸を使って「食事が出来る」という事で子供のやる気が出て、少しでもスムーズに食事が進むようになるのであれば、お母さんにとってもありがたいですよね。「出来る」という事は子供にとってとても価値のある事です。エジソンのお箸はかわいいデザインの物もたくさんありますし、キャラクター物も充実しています。お気に入りのキャラクターのエジソンのお箸を使えば、いまいち気分が乗らなかった食事の時間も楽しみな時間にしてくれるかもしれません。

 ⇒ かわいいデザインのエジソンのお箸

また、お母さん方の心配事と言えば、「エジソンのお箸を使うと変なクセがついて普通のお箸がなかなか使えなくなる」というエジソンのお箸のデメリットに関する噂ではないでしょうか。結論から言ってしまうと心配しなくても大丈夫です。

エジソンのお箸から普通のお箸に替えて上手に使う事が出来ないのは、普通のお箸を使う為の手の機能が十分に発達していないからです。エジソンのお箸を使っていても、普通のお箸を使う手の機能が十分に備わってくれば、ちょっとの練習ですぐに普通のお箸が使えるようになります

むしろ、エジソンのお箸のデメリットを挙げるのであれば、エジソンのお箸から普通のお箸に替える事によって、今まで出来ていた食事動作が出来なくなってしまう事です。お子さんからしたら今まで出来ていた事が出来なくなってしまったら悲しいですよね。これが、エジソンのお箸を一度使うと普通のお箸への移行がスムーズにいかないと言われる一番の理由です。上記の理由から、あまりにも早い時期にエジソンのお箸を使って食事の練習を始める事はおすすめしません

 

いかがでしたでしょうか?

エジソンのお箸に関する疑問は不安は解消出来ましたか?

 

メリットもデメリットも挙げましたが、エジソンのお箸はとても便利な物です。目的や用途をよく理解した上で利用してみて下さいね。お箸の練習は焦らず、「時期がくれば出来るようになるさ」くらいの余裕をもってあげた方が、お子さんにとっても、お母さんにとっても、不要なストレスが無くておすすめです。

最後に、お子さんのお食事の練習をするのに便利なグッズを紹介します。

イギリスのダイセム社が出している滑り止めシートをご存じですか?

病院ではよく患者さんに紹介する定番の商品なのですが、はさみで必要な長さを切って使う事が出来ます。ポリ塩化ビニール素材で薄くて持ち運びにも便利ですし、水洗いも出来るので衛生的です。一般家庭だと1メートルから手に入るので、ゆったり目に切っても3枚くらいはとる事が出来ます。価格も格安です。是非、一度お試し下さい。

滑り止めシートロール 1m 青